Lindores Abbey Distillery

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1. はじめに

ァイフ州に位置するLindores Abbey 蒸溜所は、単なる新興蒸溜所を超え、「スコッチウイスキーの精神的な故郷」としての歴史的正統性を体現する存在といってもいいかもしれません。

1494年の「エクスチェッカー・ロール(国庫受納帳)」に刻まれた、国王ジェームズ4世から修道士ジョン・コーへの「アクア・ヴィテ(生命の水)」製造命令の記録にあります。
これはスコッチウイスキーに関する現存する最古の公的記録として知られています。

「修道士ジョン・コーに8ボルの麦芽を与えてアクアヴィテを造らしむ」

修道院は、宗教施設であると同時に、お酒の醸造・蒸留に加え、医療的利用(消毒)の拠点としての機能もありました。

その後、16世紀の宗教改革によって、改革派が来訪し、リンドーズ修道院はほぼ破壊されたとのことです。また資材に関しても近隣住民に持ち出されて、残っていなかったようです。

2017年、523年の空白期間を経てこの聖地で蒸溜が再開されたことは、ウイスキーの歴史におけるミッシングリンクの修復を意味します。

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  • 設立年・創業年: 2017年
  • 現在のオーナー: McKenzie Smith family / The Lindores Distilling Co Ltd
  • 現在の蒸溜所責任者: Gary Haggart (Distillery Manager)
  • 蒸溜所名の由来: 1191年に創設されたリンドーズ修道院(Lindores Abbey)に由来。
  • 所在: ローランド。


ウイスキーの本で有名なマイケル・ジャクソン氏(ポップスターではない)の調べてで「リンドーズアビーがウイスキーの発祥の可能性」を知らされた Drew MkKenzie Smith 氏が自らも調査を重ねて、実際にジョン・コーがこの修道院の修道士であったという証拠まで得ることができました。これをきっかけに蒸溜所建設を決めたようです。

3. 製造について

  • 仕込み水: Borehole(現地井戸水)|かつて修道士が利用していたと考えられる水源を蘇らせている。
  • 麦芽の調達:外部調達|近隣のParkhill Farmなど、地元の麦芽を利用。3.週間ごとに28トンロットが納入され、自社仕様でミリング。
  • 1バッチの仕込量:2 トン(セミロイタータンを使用)
  • 発酵槽: 4 基(材質:オレゴンパイン製。発酵時間は96時間、酵母は商用パックを10kg投入)
  • 蒸留器: 初留 1基、再留 2基。初留で得たアルコール(ローワイン)を2つにわけて2基の再留器で同時に蒸留。
  • 年間生産量: 22.5万リットル

蒸留器が初留1基で再留が2基である点は、故ジム・スワン博士のアイデアとのことです。再留を2基にすることで、蒸留時にアルコールとの銅との接触が増えて、オフフレーバーである硫黄分と反応して除去することができます。
この2つの再留器には名前がつけられており、PoppyとGeeというとのことです。PoppyもGeeも現在運営を担っているMcKenzie Smith夫妻の娘さんのお名前だそうで、実際にPoppyさんは広報などを担っているとのことです。

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4. ツアー/ビジターセンター

  • ビジターセンター・ショップ:あり
  • 併設バー:あり
  • 各種ツアー:あり
  • ハンドフィル:なし 限定ボトルはあり
  • 購入したボトルの国際配送対応:なし

参加したツアー

  • Distillery Standard Tour:従来は歴史の話からスタートするようですが、直前にHistory Tourに参加していたことから軽くスキップしつつ、一通りのご案内を頂きました。
  • History Tour:Lindores Abbey(修道院)跡地を歩きながら、歴史の解説をいただけるツアーです。

5. 面白いポイント

歴史的な場所であることもそうですが、蒸留器を再留を2基で行う点は面白い仕組みだと思います。
そういえば、同じような考え方で初留1基に対して再留2基で蒸留する蒸溜所を見かけました。MacallanやGlenfiddichですね。


6. まとめ

Lindores Abbeyは冒頭の通り、スコッチウイスキーの最古の記録が示す歴史的な場所であり、そこで新しく設立された蒸溜所には、単なる新興蒸溜所とはいえない魅力があります。

また地元の農家と連携した原料調達に加え、再留における工夫なども面白いポイントです。

ツアーでは、蒸溜所ツアーだけでなく、リンドーズ修道院に関する歴史的な背景を知るツアーもありますので、あわせて参加頂ければより深く理解ができるのではないでしょうか。

参考文献

  • MALT WHISKY YEARBOOK 2026
  • 土屋守「スコッチモルト大全」(小学館)
  • サイト

*写真は全てサイト運営者が自身で撮影したものです。

* 記述内容に誤りがある場合は是非ご教示ください。

* こちらは当サイト運営者訪問時点(2026年4月)での情報となります。蒸溜所側での変更もありますこと、予めご承知おきください。